ここでは目の下のくまやたるみの治療に関する選択の理解を深める目的で海外の論文を元に参考になる情報を紹介したいと思います。
『Tear Trough Deformity : Review of Anatomy and Treatment Options』
Ross L. Stutman,Mark A. Codner
Aesthetic Surgery Journal 32(4) 426-440
この論文は2012年に発表されており比較的新しく、著者の知識および72の参考文献をもとに15ページにわたって英語で書かれております。
目の下のクマのとくにtear trough deformityについて解剖学的な解説を歴史を追いながら詳細に説明され、またそれに対する治療方法を外科的な方法、非外科的な方法について全般を様々な世界の論文をもとに解説されています。
本来、論文の内容の順に沿ってご紹介するべきですが、このブログの趣旨である「目の下のくまやたるみに対する治療選びに役立つ情報を出す」という観点から先に論文を読んだまとめを特に治療方法の選択にしぼって載せようと思います。
尚、Aesthetic Surgery Journalという雑誌は世界の美容形成外科医が投稿する有名なアメリカ合衆国の雑誌ですが、論文の中で引用されている写真はやはり欧米人の写真が多くなっております。基本的な解剖学は人種にかかわらず同じですが、治療の実際はこれらを参考に東洋人に合う選択をする必要があります。
また、この論文が目の下のクマ治療の全てを論じられているわけではないと思います。
≪目次≫
1、まとめ
2、論文の内容 - 治療選択について -(部分抜粋)
2-1、非外科的な治療選択
2-1-1、ヒアルロン酸注射
2-1-2、脂肪注入(脂肪移植)
2-2、外科的な治療選択
2-2-1、経結膜アプローチ(下まぶたの裏からのアプローチ)
2-2-2、経皮的アプローチ(皮膚からのアプローチ)
2-2-3、眼窩周囲骨充填(目の下の骨に対する補充)
2-2-4、あり得る外科的な合併症
3、最後に
論文はtear trough deformityという「目の下のクマ、へこみ」の部分にフォーカスを当てて解説されていますが、その改善が若返りにつながるという「アンチエイジング」という考えも含まれています。
下の論文の内容では省略しておりますが「目の下のクマ、へこみ」について数十年にわたって様々な医師が新たな発見や意見を論文に発表しているという現実からこの領域を理解することがどれほど難しいことかということがわかります。
(この分部の解剖学的な説明は圧巻です。機会があれば紹介したいと思います。)
総じて美容形成外科医むけに書かれた論文ではありますが、治療方法の選択を全体的に見渡しますと、注入または手術という方法でなりたっており、日本で選択される治療方法と大きくは同じです。
しかし、細かくみますと、
などが日本での現状と違うように思います。
また、個々の手術方法について色々な解説がありますが、ほかの方法との細かな比較についてはあまり記載がありませんでした。
目の下のくぼみクマ(tear trough deformity)を治療することにフォーカスがあたっており、主にはこのブログでお伝えしているクマの内部要因を解決することに力点が置かれることになっていました。
これは想像ですが、欧米人の骨格はもともと外部要因を整えやすいため、内部要因の解決に注力すればクマがよくなったように見えやすいという背景(いわゆるのっぺりした中顔面の人が少なく、立体的な顔つきの人が多い)があるのではないかと個人的には思いました。
世界標準の様々な治療経験を元に一人一人の症状に合わせて適応していくことが大切なのだと思います。
tear trough deformityを非外科的に改善すること(注射)は特有の難しさがあります。tear trough deformityは他の顔のくぼみ(例えば法令線など)とは違って、そのくぼみの幅、皮膚の質感の違い(薄いこと)、隣接した眼窩脂肪の存在ゆえにより技術的な施術が必要となります。
治療にあたっては以下のことを評価する必要があります。
ヒアルロン酸はクマのくぼみ領域へ注入後の結果が気に入らなかった場合にヒアルロン酸分解注射で元に戻せるので最も頻繁に勧められています。
ヒアルロン酸注入の合併症:
自己脂肪の利用はその使いやすさと容易に採取できることから顔の若返りに推奨されてきました。加えて、異物が入らないことと永久的な効果が期待できることから多くの患者にとって特に魅力的です。脂肪移植は非外科的に注入で行う方法と目の下の外科的な治療に伴って直接配置する場合があります。
目の下のたるみとり治療は昔の単純に脂肪と皮膚を切除する方法から若々しい形を取り戻すように眼窩脂肪の切除を最小限にして温存する方法へと進化してきました。
同時に中顔面の脂肪の委縮や減少に対してtear trough deformityの治療のための技術が取り組まれています。
眼窩脂肪の移動術や脂肪移植がそれらに対して有用です。
Goldberg technique:(下瞼の裏の結膜よりアプローチして骨膜下に眼窩脂肪を移動固定)
Kawamoto and Bradley technique:(下瞼の裏の結膜よりアプローチして骨膜上に眼窩脂肪を移動固定)アジア人家系の目の下のくぼみは独特の変化がある。
Hidalgo technique:(下瞼の裏の結膜よりアプローチして眼窩脂肪を一部切除して一部を移動させる)
Freeman technique:(下瞼の裏の結膜よりアプローチするが、眼窩脂肪ではなくSOOF(眼輪筋下脂肪)を持ち上げる)
Hamra technique:皮膚筋弁を用いた経皮的アプローチによって下眼瞼のたるみの改善を提唱しています。窪んだ感じや手術を受けたように見えることを避けることに注力して、彼の方法は下眼瞼の脂肪を温存することを強調しています。潜在的にある骨格の形が年齢とともにあらわになることに対応するためにLoebが発表したものに類似して、眼窩脂肪を移動するとともにarcus marginalisを解放し、Hamraは眼窩隔膜の固定を追加しました。Hamraは脂肪および眼窩隔膜の固定を切除を最小限にした上で行うことを勧めています。152症例に対して行ったHamraの報告では術後にできた血腫(血のたまり)に対して除去する必要があった人が一人と眼窩脂肪内側のあまりを追加切除した人が二人いました。
Barton technique:
Carraway technique: (以下更新予定です)