裏ハムラ法とハムラ法の違い

 

「裏ハムラ法とハムラ法の違いは何ですか?」と聞かれることがあります。

おそらく裏ハムラ法ハムラ法という言葉を知っているということはある程度目の下のクマやたるみに関する治療について調べた結果、そういった治療方法があるということをご存知の方であると思います。

また、「ハムラ法を勧められましたがやはり皮膚を切らないといけませんか?」という質問もよく受けます。

ここでは裏ハムラ法とハムラ法の違いについてお話ししたいと思います。

ハムラ法と裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)

ハムラ法:目の下の皮膚を切開して行うたるみ取りの治療方法の一つ

裏ハムラ法:経結膜的眼窩脂肪移動術。皮膚を切開せずに目の下の膨らみ、たるみを改善する治療方法の一つ。当院ではそれを応用して経結膜的眼窩脂肪組み換え術を行っています。

ハムラ法とは

ハムラ法は目の下のたるみを改善するために皮膚切開を伴う手術の方法で、大変有名な手術方法です。

  • 1
    まつ毛の生えぎわの皮膚を切開します。
  • 2
    そのまま眼輪筋という筋肉も切開をします。
  • 3
    たるみを作っている眼窩脂肪という脂肪の膨らみを下に移動させるなどの処置を施します。
  • 4
    さらにクマがよく見えるように筋肉などの処理を行うこともあります。(世界的には様々な方法が報告されていますが、医師の技量によって行う内容はことなります。)
  • 5
    たるんだ皮膚にハリを出すように切開した眼輪筋を吊り上げます。
  • 6
    余った皮膚を切除します。
  • 7
    皮膚を縫合して終わります。

裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)とは

裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)は目の下のクマやたるみを改善するために下まぶたの裏からアプローチを行う手術方法で、海外ではよく行われます。

  • 1
    眼球を保護して下まぶたの裏を切開します。
  • 2
    たるみを作っている眼窩脂肪という脂肪の膨らみを下に移動させるなどの処置を施します。
  • 3
    さらにクマがよく見えるように筋肉などの処理を行うこともあります。(この処理は様々な方法が報告されていますが、医師の技量によって行う内容は異なります。)
  • 4
    まぶたの裏の傷は縫う場合と縫わない場合があります。
  • 5
    目の下の形が整ったところで手術は終了します。

ハムラ法とは皮膚を切開して目の下のクマやたるみを改善する方法であるのに対し、裏ハムラ法はハムラ法の治療方法のうち、皮膚を切開せずにそれを行うという治療です。

具体的には目の下の膨らみをその下の影に移動して形を整えるという点は共通ですが、皮膚切開を行うハムラ法の場合は同時に皮膚・筋肉を吊り上げて余った皮膚を取り除くことを行います。

ハムラ法と裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)の様々な比較

ハムラ法と裏ハムラ法でいろいろと違いがありますので、それらを比較していきたいと思います。

症状に対する比較

皮膚のゆるみ

ハムラ法、裏ハムラ法の対象となる症状の違いは主に、「皮膚のゆるみ」です。
ハムラ法では皮膚のゆるみに対応できますが、裏ハムラ法では対応できません。

もう少し細かく言うと、表面の皮膚とそのすぐ裏に張り付いている眼輪筋(がんりんきん)という薄い筋肉のゆるみを処置するかどうかということになります。

笑った時にたるみがなくなって見えることがあると思いますが、それは眼輪筋の収縮によるものです。

皮膚とその眼輪筋が強く緩んでいる場合には目の下の膨らみを作っている脂肪だけではなく、皮膚、眼輪筋をも処置しないと目元がきれいに見えない場合があります。

それをすることができるのは裏ハムラ法ではなく、ハムラ法です。
ハムラ法では余った皮膚を取り除くために皮膚そのものに切開を行います。

目の下の膨らみ

また、目の下の膨らみを作っている脂肪(眼窩脂肪 がんかしぼう)はハムラ法であっても、裏ハムラ法であっても同様に処置をすることができます。

目の下のたるみが気になってきたなあという場合、30代くらいまでであればほとんどの場合、脂肪(眼窩脂肪)による膨らみであることが多いです。

その場合は皮膚やその裏の眼輪筋のゆるみはあまりありませんのでハムラ法を行うメリットがほとんどありません。

皮膚のゆるみもとれるならハムラ法のほうが良いと思われるかもしれませんが、あとで述べる涙袋の形の変化についても比較する必要があります。

そのことが目元の自然さに関わってきます。

目の下のシワ

目の下のたるみが気になる方の中にはシワも気になりますという方がいらっしゃいます。
目の下のシワに対してはハムラ法のほうが裏ハムラ法より効果的です。

ただし、ハムラ法であっても小ジワは取れないことが多いです。

また、ハムラ法であっても元の状態によってはシワが増えることがあります。
これは手術をしてから1年後に評価をされるべきものです。
3か月程度ではまず評価はできません。

目の下のクマの色

クマの色についてはハムラ法の方が裏ハムラ法より薄くなって見えることがあります。
指で皮膚を引っ張ると目元のクマの色が薄く見える原理に近いです。

ただし、指で引っ張るほど強い力でずっと引っ張ることは手術では難しいため、ハムラ法だから色が薄くなるとは言えません。
ハムラ法と裏ハムラ法ではクマの色に対してそれほど大きな差は感じられません。

頬の引き上げ

目の下のたるみを治療する場合に、無視できないエリアとして目の下のさらに下の頬のたるみがあります。

できれば目の下のたるみと同時にその部分も引き上げたいというときにはハムラ法の方が引き上げ安いです。

裏ハムラ法でも狭い範囲であれば引き上げることができますが、ハムラ法の方がより広い範囲で引き上げることができます。

この引き上げを当院ではミッドフェイスリフトと呼んでおりますが、裏ハムラ法では頬前面の引き上げと呼んでおります。

対象年齢の比較

  ハムラ法 裏ハムラ法
20代 ×
30代 ×
40代 ×~△
50代 ×~〇 ×~〇
60代以上 ×~〇 ×~△

目の下のたるみをハムラ法または裏ハムラ法で治療する場合、個人的にはおおよそ上記の表の印象を持っています。

そもそもそのどちらも対象にならない症状は含まれていません。

40代くらいまではできれば皮膚を切開しないで手術をした方が自然であることが多いと思います。まれに皮膚のゆるみが無視できない40代の方もいらっしゃいます。

50代以上になってきますと皮膚のゆるみが無視できなくなることがありますので裏ハムラ法よりハムラ法の方がよいということがあります。

涙袋の比較

ハムラ法と裏ハムラ法では涙袋の形に差があります。

裏ハムラ法では涙袋に何か処置を施すことはありません。

ハムラ法では涙袋の構成成分である皮膚と眼輪筋を一度切開しますので、意識的に作るかあるいは特別に作ることはしないかのどちらかになります。

作ろうとしても難しい場合もあります。

30代くらいの方で、ハムラ法を受けた場合、人によってはもともとあった涙袋がなくなったと感じことがあります。

ダウンタイムの比較

ハムラ法と裏ハムラ法ではハムラ法の方がダウンタイムは長くなる傾向にあります。

ハムラ法は皮膚を切開して眼輪筋を引っ張り上げているぶん長くなります。

どちらも個人差がありますが、ハムラ法は2週間は不自然さを覚悟しておいた方がよいでしょう。

また、ハムラ法ではその処置のため、結膜(白目の粘膜のようなもの)がむくんで膨れることがあります。

これは2週間から長い時で数か月におよぶこともあります。

手術後の痛みの比較

ハムラ法の方が皮膚を切って、眼輪筋の処置までしているぶん、痛みも強く出そうですが、実際にはそれほど痛みの差はないようです。

全体的な処置により感覚が一部麻痺していることが関係あるかもしれません。

術後経過の比較

ハムラ法も裏ハムラ法も術後経過は似ています。

ハムラ法の場合は眼輪筋の動きが一時的に鈍くなりますので、笑っても涙袋が出にくい、目の下の感覚の鈍さが出やすいなどあり、その回復に数か月かかります。

感覚の鈍さは裏ハムラ法も出ることがあり、やはり3~4か月程度回復にかかります。

ハムラ法は眼輪筋の吊り上げ固定を行うため、目が釣り目に見える時期があります。これが改善してくるのには3か月以上かかります。

手術のリスクの比較

ハムラ法と裏ハムラ法では手術のリスクに差があります。

外反(あっかんべー)のリスク

ハムラ法では下まぶたがあっかんべーの状態になってしまうリスクがありますが、裏ハムラ法ではほとんどありません。

特に外反は高齢になるほど起こしやすいです。
あとは眼球の前後関係なども影響します。

通常は皮膚の取りすぎでなければやがて外反は落ち着いてきます。(3か月程度)

三白眼(白目の下がでる)のリスク

外反にならなくとも下まぶたが若干下に引っ張られて白目が出がちになることがあります。

これは裏ハムラ法がほとんどならないのに比べ、ハムラ法の方が組織の拘縮(収縮)によりなりやすい傾向にあります。

シワが増えるリスク

二つの施術を比較すると裏ハムラ法の方がシワが増えやすい傾向にあります。
が、40代くらいまでの方はさほど気にならない程度のことが多いです。

長期経過の比較

長期的にみると目の下の膨らみ部分の経過はハムラ法も裏ハムラ法もあまり変わりません。
皮膚のゆるみをハムラ法で改善した場合、その効果は数年にわたって持続します。
その点、裏ハムラ法はそこは難しい部分になります。

ハムラ法の皮膚のゆるみに対する効果は数年と書きましたが、残念ながら手術後からも人は加齢していくからです。

結果的にまた皮膚は緩んできてしまいます。
それでもある一定の効果は永続的に感じられます。

手術の難易度の比較

手技的にはハムラ法は裏ハムラ法で行っていることに加えて眼輪筋の処置や皮膚の切除などプラスαのことをしているため難しいように見えます。

しかし、裏ハムラ法は下まぶたの裏から手術を行うため、その視野はハムラ法にくらべると格段に狭い状態です。

そのため膨らみに対して同じ効果を出そうとおもうと断然裏ハムラ法の方が難しくなります。

かといってハムラ法で行う眼輪筋の吊り上げなども様々な経験がないと難しい場面があります。

結局、一概には比較できません。

手術件数の比較

日本全体でみるとハムラ法の方がされてきた歴史が長いため、現在もハムラ法の方が多いかもしれません。

当院に関して言えば、裏ハムラ法の方が件数は多いです。

最近は流行り?のように裏ハムラ法が世の中でも増えてきた印象があります。(なんちゃって裏ハムラ法もあるようですが)

裏ハムラ法ではなくハムラ法を行うことのメリット・デメリット

裏ハムラ法を選ぶかハムラ法を選ぶかは症状で決めることになりますが、一般的なメリットとデメリットを知っておくことが大切です。

メリット

皮膚の張りをだすことができる。

デメリット

皮膚を切開する必要がある。

涙袋の形が自然でなくなる可能性がある。

下まぶたが外反する(あっかんベーの状態)可能性がある。

皮膚をたくさんとる必要がない場合には余計な負担がかかる。

症例による比較

例えば以下のような方はハムラ法を選んだ方が良いと思います。

施術名:皮膚切開によるたるみ取り(ハムラ法)+ミッドフェイスリフト
リスク:腫れ、内出血、感覚の鈍さ、痛み、外反(アッカンベーの状態)、左右差など
費用:82.5万円(税込み)

目の下に膨らみがあるが、皮膚・筋肉のゆるみも無視できないほどたるんでいる。

涙袋の形などはご年代的にさほど気にならない。

などが理由としてあげられます。

また、以下のような方は裏ハムラ法(当院では眼窩脂肪組み換え術)を選んだ方が良いと思います。

施術名:経結膜的眼窩脂肪組み換え術
リスク:腫れ、内出血、感覚の鈍さ、痛み、外反など
費用:44万円(税込み)

皮膚のたるみがあまりないため皮膚を引き上げる必要がないこと

膨らみの形を整えるだけで綺麗になること

自然な涙袋の形に操作を加えない方がよいこと

などが理由としてあげられます。

注意点

基本的な手術技量としてそもそも裏ハムラ法で形を作れる技術がなければ、ハムラ法でも形を作れないという現状があります。

裏ハムラ法はできないけれどもハムラ法はできますというのは実は非常に怪しい言葉です。

指で目尻付近の皮膚を引っ張ると皮膚の張りも目の下の膨らみも解決されますが、手術ではそんなに都合のよいことは起こりません。

一般的に皮膚のたるみは引っ張ることで色々なことが解決したように見えますが、必ず後戻りが生じます。

その後戻りがあったあとに手術の本当の結果がでます。

後戻りがあったあとに目の下の膨らみなどが綺麗に処理をされていなければハムラ法で行っていても膨らみの形がでてしまうことがあります。

裏ハムラ法は皮膚を引っ張るという手段がない中で形を作るため、皮膚を引っ張るという行為に頼ることなくいい形を作ります。

ハムラ法も皮膚を引っ張らずとも綺麗な形が作れている上で皮膚・筋肉を引っ張って張りや形を作らなければいけません。

ハムラ法を検討する場合にはまずは裏ハムラ法ができる(結果が出せる)医療機関でその必要があるかをご相談されることが大切です。

 

「裏ハムラ法ではシワが増えませんか?」

と聞かれることがあります。

端的にお答えすると「可能性はありますが、想像するほどでません。」ということになります。

裏ハムラ法を行った場合の小じわの出具合とハムラ法を行った場合の涙袋の形が変わることなどを天秤にかけて手術方法を選ぶ必要があります。

目元の治療をさせていただく方々の中でハムラ法を選んだ方が圧倒的に良い方というのはそれほど多くはありません。

筆者紹介

著者
石川勝也
役職
プラストクリニック院長
資格
日本形成外科学会認定専門医
日本美容外科学会認定専門医(JSAS)
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