ここでは経結膜脱脂法と裏ハムラ法の違いについてお伝えします。
当院では下まぶたの裏から行う眼窩脂肪移動術を経結膜的眼窩脂肪組み換え術(≒裏ハムラ法+α)と呼んでいますが、カウンセリングでは経結膜脱脂法と裏ハムラ法との違いをよく聞かれますので、今回は裏ハムラ法としてお伝えします。
経結膜脱脂法と裏ハムラ法はともに目の下の膨らみに対する治療です。
どちらも目の下のふくらみの大部分を改善することができます。
ただし、眼輪筋による膨らみはどちらも改善できません。
(ハムラ法のページの「涙袋のゆるみについて」を参照)
どちらの方法を選ぶかは膨らみの程度で選ぶというよりはクマの色味やふくらみの周りの組織や骨格の状態で選ぶことになります。
まれに、ほとんど膨らんでいるように見えないクマの症状に対しては裏ハムラ法であれば適応になることもあります。
経結膜脱脂法、裏ハムラ法ともに皮膚のゆるみそのものを改善する治療ではありません。
したがって、どちらの治療をおこなったとしても皮膚のハリが出るわけではありません。
しいて言うなら中身を減らす経結膜脱脂法よりは中身を温存しながらずらすことによってふくらみを解消する裏ハムラ法の方が、ゆるみの悪化がマイルドであると言えます。
皮膚のゆるみを改善する目的であれば、どちらの手術よりも皮膚切開治療(ハムラ法など)を検討する必要があります。
目の下にくぼみがある場合、経結膜脱脂法の単独手術が適応になることはほとんどありません。
裏ハムラ法の場合は状態によってはよい適応になります。
症状によっては裏ハムラ法だけでも不十分な場合があり、そのときは後日、脂肪注入を検討することもあり得ます。
目の下のシワに対しては経結膜脱脂法も裏ハムラ法も治療の適応になりません。
両施術とも目の下のシワは悪化する傾向にあります。
しいて言うなら、裏ハムラ法の方がシワの出方は軽微であることが多いです。
目の下の膨らみと同時に色によるクマがある場合、経結膜脱脂法はクマの色が悪化することが多々あり、裏ハムラ法は経結膜脱脂法よりも悪化の仕方が軽微であったり、場合によっては改善されることもあります。
裏ハムラ法を行えばクマの色が良くなるとまでは言えませんが、少なくとも経結膜脱脂法よりは手術の適応になりやすいです。
目の下の膨らみ・たるみがある場合、頬前面のたるみも同時に起こっていることは少なくありません。
その場合、裏ハムラ法であれば頬の前面を引き上げることができます。
これは脂肪を移動するときに、頬前面の組織が動きやすくなるように処置しているからです。
したがって、経結膜脱脂法では頬前面の引き上げは難しいですが、裏ハムラ法の場合にはそれが可能です。
ただし、経結膜脱脂法にスレッドリフトなどを組み合わせればある程度の効果を出すことができます。
経結膜脱脂法 | 裏ハムラ法 | |
---|---|---|
20代 | 〇 | 〇 |
30代 | 〇 | 〇 |
40代 | ×~〇 | 〇 |
50代 | ×~〇 | ×~〇 |
60代以上 | ×~△ | ×~△ |
注意:症状によっては年齢に関係なく適応にならない場合もあります
個人的な見解として経結膜脱脂法および裏ハムラ法の年代別適応はおおむね上記のように考えています。
つまりどちらもそれなりに適応になりえると言えます。
40代で経結膜脱脂法を行った場合にシワ・たるみの悪化が無視できない症状の方がまれにいらっしゃいます。
経結膜脱脂法を行って眼窩脂肪を積極的に減らした場合は裏ハムラ法よりは涙袋が出やすい傾向にあります。
ただし、どちらの手術方法も涙袋の形をコントロールできる治療ではありませんので注意が必要です。
つまり、涙袋を好きな形にするための治療ではありません。
経結膜脱脂法の術後の腫れは3日から1週間程度でほぼ落ち着きます。
裏ハムラ法は1週間から10日程度で落ち着きます。
したがって、腫れ感は裏ハムラ法の方が強くでます。
経結膜脱脂法に比べて、裏ハムラ法は手術範囲や組織を剥離する操作により痛みは大きくなります。
ただし、どちらも術後の痛みで困ることは経験上、ほぼありません。
経結膜脱脂法は主な腫れ感が引いた後、涙袋付近のむくみが残りやすいです。
このむくみがある関係で、本来の完成よりも目の下が暗く見える時期があります。
また、経結膜脱脂法後に何かしらの目の下の注入を行う場合には少なくとも1か月程度は様子を見る必要があり、むくみが完全に引くには3か月程度かかります。
裏ハムラ法は主な腫れが引いた後もわずかな凹凸感や硬さ、こわばり感がでることがあります。
そのため、結果を評価するのに3か月から6か月かかります。
また、経結膜脱脂法では目の下の皮膚の感覚異常はほぼ出ませんが、裏ハムラ法では感覚異常がでることがあり、それらの回復には通常4か月以上を要します。
経結膜脱脂法と裏ハムラ法のリスクの差についてお伝えします。
ただし、この限りではありません。
術後経過の比較のところでもお伝えしましたが、経結膜脱脂法は目の下の感覚の違和感はほぼでませんが、裏ハムラ法は出ることがあります。
これは裏ハムラ法の方が組織の剥離を要するためです。
回復には4か月以上かかりますが、1年でもまだ多少残っているということもあります。
出血した血液が中でたまった状態を血腫(けっしゅ)と言います。
経結膜脱脂法は血腫ができる可能性はかなり低いです。
一方、裏ハムラ法は剥離範囲があるため、血腫ができる可能性があります。
程度が強い場合には除去する処置を追加で行う可能性があります。
黒目の下に白目が出ることを下三白眼(したさんぱくがん)と言います。
経結膜脱脂法でも裏ハムラ法でも下三白眼になる可能性がありますが、裏ハムラ法の方が可能性がやや大きいと言えます。
これは瞼の裏の傷が縮むことで起こってしまう現象です。
起こってしまった場合は様子をみることになります。
経結膜脱脂法も裏ハムラ法も目の下の膨らみ感はよくなりますが、シワは両方とも増える傾向にあります。
しいて言うならば、裏ハムラ法の方がシワは増えにくいです。
ただし、経結膜脱脂法を行う場合でもあえて脂肪を残した方が形的に良い場合もあり、そのときはシワがさほど増えないこともあります。
経結膜脱脂法は眼窩脂肪をたくさん減らすと長期的にみて再発は少ないです。
ただし、闇雲に減らすわけではなく症状に合わせて減らすことが一般的です。
ですので、数年から10年程度でいくらか膨らみ感が出てくる可能性があります。
裏ハムラ法はある程度しっかり脂肪を移動させますが、もともと膨らんでいた場所の脂肪がゼロになるわけではありませんので、やはり数年から10年程度でわずかに膨らみ感が出てくる可能性があります。
つまり、どちらも膨らみ感が出てくる可能性がありどちらか一方を選べば再発が防げるわけではありません。
いずれにしても手術前ほど出てくることは通常ありません。
経結膜脱脂法に比べて裏ハムラ法は難しい手術と言えます。
経結膜脱脂法も症状にあわせた取り方をすることは経験を要し、簡単とはいえませんが、裏ハムラ法は技量がないと手術が終われないほど難しいと言えます。
一般的な美容クリニックでは裏ハムラ法より経結膜脱脂法が多く行われます。
2020年ころから裏ハムラ法が日本でやたら流行ってきた関係で当院では裏ハムラ法に準じた方法(経結膜的眼窩脂肪組み換え術)の方がやや多くなっています。
当院ではこの方法を10年以上前から行っております。
様々な観点から比較してお伝えしてきました。
経結膜脱脂法を受けるべきか裏ハムラ法を受けるべきが悩まれることもあると思います。
手術をする医師から見ても悩ましい時もあります。
費用や体の負担に見合っているかどうかが大切であり、その方が何を望んでいるかもあわせて加味する必要があるからです。
一人一人の症状や考え方に合わせたご提案をしていただくとよいと思います。