というご相談をいただくことがあります。
以前にヒアルロン酸注射やグロースファクター注射を受けたことがある場合でも目の下のクマやたるみを治療することは可能です。
ただし、いわゆるもともと存在する目の下の膨らみやたるみと注入によってできた膨らみやたるみは全くの別物です。
ですので、場合によってはうまく改善できないことがあります。
ここではどうして注入後の膨らみ、たるみの治療が難しいのかについてお伝えしていきます。
目の下の膨らみ、影を治療したいということでご相談に来られました。
拝見しますと目の下全体に広がる膨らみが存在していました。
今までに受けたことのある治療は顔全体の水光注射のみということでした。
ご本人様とご相談させていただき、経結膜脱脂法+マイクロコンデンスリッチファット注入を施行させていただきました。
術後の経過は順調そうに見えましたが、通常とは違う膨らみが目の下にうっすらと存在していました。
これは通常の手術で減らす眼窩脂肪とは別の膨らみである可能性があると思われました。
そこで、今までに何か他に目元の治療をしていませんか?とききますと、
「10年前にヒアルロン酸を注入したことがあります。」
ということでした。
やはり注入剤によるふくらみだなと思えましたので手術後ではありますが、ヒアルロン酸分解注射をご提案させていただきました。
手術後の通常とは違う目の下の膨らみに対してヒアルロン酸分解注射をさせていただいたところ、予想通り目の下の膨らみが消失しました。
それと同時にクマが出現してしまいました。
ヒアルロン酸が分解され、目の下のくぼみが出現してしまいましたので再度経結膜脱脂法+マイクロコンデンスリッチファット注入をさせていただきました。
予定通り目元のクマが改善されました。
今回の症例の場合、目の下の膨らみは眼窩脂肪によるものとヒアルロン酸注入によるものが混ざった状態でした。
初回の手術では下まぶたの裏から眼窩脂肪を減らして、太ももからいただいた脂肪をマイクロコンデンスリッチファットに加工したものを注入してなだらかになるように注入しました。
ところが皮膚の浅いところの膨らみが残り、遠目に見るとどことなく目元が膨らんだ状態となりました。
この経過がヒアルロン酸によるものであったため追加の治療で改善することができましたが、ヒアルロン酸ではなくグロースファクター(FGF)によるものであれば改善は極めて難しいと言えます。
目の下のクマやたるみの手術のご相談に来られる方の何割かの方は今までにヒアルロン酸注射なりその他の注射を受けたことがある方です。
手術の適応を検討する場合にはそれらの情報が非常に重要になります。
医師の立場としては診察上何か違和感があるときに色々なことを考慮する材料になります。
結果的にそのことは治療を検討されている方に返ってきます。
診察しただけでは判断がつかない症状というのもたくさんありますが、それでも情報はあるに越したことはありません。
例えば、今回ご紹介したケースでは最初にヒアルロン酸を注入したことがありますと申告があればまずヒアルロン酸分解注射をご提案することもできました。
結果的には改善することができましたがやや遠回りをしてしまったと言えます。
実はこのケースはグロースファクター注入後の目の下の膨らみのご相談の方には大変参考になります。
グロースファクター注入後の膨らみのご相談は大変多いのですが、その治療はとても難しいものになります。
眼窩脂肪のようにまとまった脂肪の膨らみであれば減らすことはそれほど難しくありませんが、薄い眼輪筋や皮膚などの組織が膨らんでいる場合にはそれをちょうどよく取り除くことは極めて困難なことです。
そしてグロースファクター注入後の方が目の下のたるみの治療をお願いしますとご希望された場合に、今回の初回手術後のような経過になることが想定されます。
ヒアルロン酸注入後であれば通常と違う経過だと分かった場合に分解注射をすることができるのですが、グロースファクター注入後の場合はそれを分解する注射が存在しません。
グロースファクター注入後の方で今回の初回手術後の経過となった場合には、その時次第で何か手段があるかないかを考えないといけないということになります。
具体的にはステロイド注射や切除を検討ということになりますが、正直あまりお勧めできる治療ではありません。