当院では経結膜的眼窩脂肪移動術(≒裏ハムラ法)を経結膜的眼窩脂肪組み換え術と呼んでいます。
なぜそう呼ぶようになったかについてお伝えします。
いくつかの背景があります。
①裏ハムラ法という言葉に引っ張られて診療で困ることがある
②実際に行っていることは眼窩脂肪を下に下げるというよりは組織の前後の組み換えをコンセプトに行うようになった。
当院では以前は経結膜的眼窩脂肪移動術をなんとなくの伝え聞きで裏ハムラ法と呼んでいました。
インターネット上でも会話でも裏ハムラ法という言葉で下まぶたの裏から眼窩脂肪を移動する手術ということで使っていました。現在でも、会話の中で使っています。
ところがあるとき診療中に困ることがありました。
手術後の方から裏ハムラ法で受けたので脂肪は減らしてないですよね?という意味合いの言葉です。
私が行う経結膜的眼窩脂肪組み換え術ではときに、眼窩脂肪を減らす、あるいはいわゆるハムラ法のような眼窩脂肪の移動の仕方ではない方法で脂肪を固定することがあります。
裏ハムラ法という言葉自体の定義が何なのかは決まっていないと思いますが、その言葉でお客様からこういう風に手術をするべきだ、と手術の方法を先入観で完全に固定されると難しいのです。
おそらくハムラ法の手術方法をそのまま下まぶたの裏から行うことは多くの医師が、ときにその効果に限界や疑問を感じるのではないかと考えております。
ですので個々の医師なりの工夫が必要になるのではないかと思います。
その工夫を「裏ハムラ法」という言葉で制限されてしまうことに難しさを感じたというのが一つの理由です。
また、別の経験をしました。以前に裏ハムラ法で手術を受けたというお客様の再手術をさせていただくことがありました。
目の下のたるみの再手術の場合、いつも同じ解剖学的アプローチで手術を行うのですが、眼窩隔膜をうまく剥離できず、眼窩脂肪が見当たらず、でも確かに頬の部分には癒着がありました。
もしかしたらもともと眼窩脂肪が極めて少ない方であったのかもしれないのですが、自分が想像していた裏ハムラ法の状態とは全くちがうことによって、医師ごとに裏ハムラ法の解釈の範囲がとても大きいのだとそのとき感じました。
その経験から裏ハムラ法という言葉を使うことでお客さんに誤解を招くことになるのかもしれないという気持ちがわいてきました。
ちなみにここで眼窩隔膜がなくなっていたことは問題ではありません。
ハムラ法では眼窩隔膜の移動固定も一般的にされますが、私がお話をさせていただいた先生の中にも眼窩隔膜の移動固定の意義は議論の余地があるという見解をもたれている方もおり、私もそう感じることがあり、医師個人の工夫の結果である可能性があるためです。
ところでなぜ「組み換え」なのか、ということですが、私なりに手術をしていて最もクマが解消して見える形をつくる上でのポイントは、眼窩脂肪を下に下げることによってクマを改善するというよりは組織の前後関係を変えることによって効果を出しているという点です。
また、どの部分を最も持ち上げるようにするかということです。
眼窩脂肪の奥にある表面からは見えない組織を眼窩脂肪より前に位置させることによってクマの形を解消できる曲面を作っています。
立った状態での眼窩脂肪の位置と、寝た状態での眼窩脂肪の位置は違いますので、立った状態で眼窩脂肪の大きさや位置を確認して、手術の適応を考えます。
経結膜的組み換え術は経結膜的眼窩脂肪移動術と本質的には同じです。
眼窩脂肪を減量するというよりはその位置を変えることで目の下の形をよく見せるという考え方です。
眼窩脂肪を移動する方法やその周辺の工夫は色々な医師が行っており、その一つとして当院でも組み換え術として行っております。