目の下のくまでお悩みの方がよく当院にいただくご相談として「化粧品(ハイライトなど)では目の下のくまを隠せないのですが自宅でくまを消す方法はありませんか?」というものがあります。
自宅でご自身でできる目の下のくまの解消方法としてよく言われる方法は例えば以下のようなものです。
これらの個々の方法がどの程度効果があるかないかは別として何故効果があるのか、どのような原因が解決するから目の下のくまが解決するのかということを考えなければいけません。
世の中には実に様々な目の下のくま解消法が紹介されていますがそのほとんどは「目元の血行を改善してくまを解消する」あるいは「色素沈着を解消する」ということになっています。
上記で挙げた例のうち、血行を改善するというのが「摂取によって解消する方法」、「施術によって解消する方法」にあたり、色素沈着を改善するというのが「塗ることによって解消する」ということになると思います。
そもそも目の下のくまの原因は本当に血行不良なのか?本当に部分的に血行を改善することは医学的に可能なのか?ということについてはまた別で触れてみたいと思いますが百歩譲って血行不良が原因の一つだったとしてそれが目の下のくまの原因のどれほどの割合であるのかということも重要になってきます。
逆にいうと血行不良が原因でないくまに対して血行不良に対応しようとすることはとても時間と労力の無駄をしているということになります。
以下に血行不良が原因ではない目の下のくまの例を挙げてみたいと思います。
これらの症例紹介はほんの一部ですが、紹介した方々の目の下のくまは血行不良によるものではありません。なぜなら血行が改善するような治療は何もしていないからです。
また、上記に示したような自宅でできる目の下のくまの解消法と言われるようなことをしても全く改善しません。
では、この方々はどうして目の下のくまが改善傾向にあるのかということについては「目の下のクマ 色と形の関係」をご覧ください。
一般的に、目の下のくまの原因を血行不良であるということにしてそれを改善するためにあれこれ提案があったとすると、疑いの目でそれらを検証する必要があります。目の下のクマの成因はそれほど単純ではないためです。
では、自宅で目の下のくまを解消する方法はあるのでしょうか。
極めて限定的な効果でよければあります。たとえば、温かい濡れたタオルを目元に置いておくことや、寝る前にたくさん水分をとって寝た時の寝起きの状態などであれば人によっては一瞬改善したように見える可能性があります。
くまの症状によってはむくむことによって目の下の影がなくなったように見えて改善したように見えることがあります。
ですので、わざとむくんだ状態を作ることによって改善したように見せることができます。(ただし、一部の症状に限ります。)
残念ながらこの方法はむくみがとれると元に戻ってしまいます。
我々が医療の現場で遭遇する目の下のくまが改善したように見える現象はたとえばヒアルロン酸分解注射(ヒアルロニダーゼ)を目の下に注射したときです。
ヒアルロニダーゼは目の下に注射したヒアルロン酸を溶かすときに使用しますが、多くの方はヒアルロニダーゼを注射すると多少のむくみがでます。
「そのときの状態が好きでした。」と言われることは何度もあります。
あるいは何かしらの施術で顔がむくんでいる状態のときに対しても目の下のくまも消えて好きだったと言われることがあります。
これらは意図したくまの解消ではなく、くまが改善したように見える現象がおこっているにすぎません。
それらの理由の主な部分は「目の下のクマ 色と形の関係」に由来します。
ちなみに、むくむ状態をつくることは血行が良くなることとは全然関係ありません。(話がややこしくなるので深くは触れませんが浮腫と血流改善は全く別物です。形成外科の常識です。)
それでは「ハイドロキノンなどのくすりを塗る方法」についてはどうでしょうか。
目の下のくまのうち色素によるくまの原因は主に後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)というものです。
真皮という名前がついているだけあって表面ではなくもう少し深いところに存在している色素です。
後天性真皮メラノサイトーシスの治療はハイドロキノンだけでは不可能です。
そもそもハイドロキノンの役目は生成される色素を抑えることが中心であるため、レーザー照射およびトレチノインの塗布が推奨されます。
残念ながらレーザー照射もトレチノインの塗り方も一人で行うことは難しく医療機関でコントロールしながら行う必要があります。
≪補足≫
ところで、色素があるからといって色素をどんなに治療できたとしても全然よくなったように見えないことが多々あります。(というか目の下のくまのご相談で来られる方の大部分かもしれません。)
例えば、以下の方は色素の治療は何もしていません。色素の治療をする前にするべきことがあるからです。
≪結論≫
自宅で根本的に解決できる方法は現状なさそうです。
(もしあれば、是非当院にご連絡ください。できるだけ検証していきたいと思います。)
ここでは私の臨床経験の中でわかることを根拠を持ってお伝えしておりますが、それでもそれぞれの解消方法に納得がいけば個人個人で試されてみるのはよいと思います。