目の下の経結膜脱脂法で上まぶたはくぼむか

 

目の下のクマやたるみ治療の一つとして経結膜脱脂法またはそれにプラスアルファの治療を行うことがよくあります。

そこで、ときどきいただくご質問として「目の下の経結膜脱脂法をすると上まぶたが窪むと聞いたのですが本当ですか?」というのがあります。

私自身が治療を担当させていただいて明らかに上まぶたが窪んだなぁと感じたことは(おそらく偶然)ないのですが、実際にそのような症状で受診に来られた方を2度拝見したことがあります。

一人の方は3ヶ月ほど前に経結膜脱脂法+脂肪注入術を他院様でお受けになられていた方でした。治療前の写真を持ってこられていましたので治療後の状態と比較すると強度ではありませんが確かにくぼみが存在していました。

二人目の方は半年ほど前に経結膜脱脂法+グロスファクター(成長因子)の注射を他院様でお受けになられていました。やはり治療前の写真を持ってこられていましたので比較するとぼっこり窪んでいるわけではありませんが、眉毛付近の骨の輪郭が治療前よりはっきりしている状態でした。ご本人様としては目も窪んだとおっしゃっていました。

上まぶたのくぼみの変動について

上まぶたのくぼみを評価する際には午前と午後とで顔のむくみ方が違うので午後の方がくぼみがちになるということは治療を受けていなくても一般的にあると思います。

また、体重の減少によってもくぼみ目になってきます。

上まぶたが窪む理屈について考えてみました

眼球が入っている骨の枠を眼窩(がんか)と言いますが、眼窩自体は加齢性変化とともにゆっくり形が変わってくることが知られていますが、3ヶ月や半年で変わることはありません。

眼窩というある一定の大きさの容器の中に眼球とそれを包む眼窩脂肪があり、そのほか血管、神経、筋肉などが存在しています。

ただし、すべてが眼窩の中に入っているのではなく、例えば目の下の膨らみ部分の眼窩脂肪ははみ出しているところも多いものです。

経結膜脱脂法では眼球の下に存在する眼窩脂肪を全部とるのではなく、一部をとる(むしろいかに残すかという)手術ですので、眼窩の中の全体の組織と比較すればわずかな量ですがそれでも理論上は眼窩内の組織量が減ることには変わりがありませんので結果として上まぶたがくぼみ傾向になることがあるのかも知れません。

また、目の下の眼窩脂肪は上の脂肪とはつながっておらず、視神経などで分けられているため目の下の経結膜脱脂法では上まぶたが窪むことはないという意見もあるようですが、眼窩の容積は一定で、中身が減る訳なのでその理論には私はやや懐疑的です。

脱脂に関係なく上まぶたはくぼむ?

上で目の下の脱脂をおこなうと上まぶたがくぼむ理由について「無理やり」考えてみましたが、ここで別の考えを述べようと思います。

美容外科診療をしていますと脱脂に関係なくただ単に上まぶたのくぼみを気にされて受診に来られることがよくあります。

その原因には眼瞼下垂や骨格の要素など様々なものがあります。

その上まぶたのくぼみを気にされている方の中で「2か月前からくぼみが気になるようになりました。」とか「最近急に上まぶたがくぼむようになりました。」などとおっしゃられることがあります。

そんなに急に上まぶたがくぼむことはあるのかなぁと思いますが実際にはそのようにおっしゃられる方もいます。

今現在思うこと

目の下の経結膜脱脂法を行うと上まぶたが窪む可能性があると考えています。

それを検証するには統計学的な解析が必要なのだと思います。

「経結膜脱脂法を受けた方の中で上まぶたが窪んだ方の割合」と「手術などは受けておらず特に理由がなく上まぶたが窪んだ方の人口に対する割合」を比較する必要があります。

明らかに経結膜脱脂法を受けた方の方が大きければ可能性があると判断できると思います。

(統計学的には「有意差がある」と言います。)

特に差がなければ「たまたまくぼんだ」、あるいは「くぼんだ気がする」ということだと思います。

 

数多くの方の目元のくまやたるみ治療後の経過を拝見して、リアルタイムで上まぶたが窪むような経過を見たことがありませんでしたので「経結膜脱脂法で上まぶたが窪むこと」はまずないであろうと一時期までは思っておりました。

しかしながらお二方の経過を拝見してまれにそのようなことがあるのかも知れないと現段階では思っております。

また、私自身が担当させていただきました方々の中でも明らかではないが弱冠そういった傾向がある方もいらっしゃるのかも知れません。

また、より深い知見や考察があればお伝えさせていただきたいと思います。

予防方法

ではその極めてまれにおこるのかも知れない上まぶたのくぼみに対する予防方法はあるのでしょうか。

おそらく、眼窩脂肪へアプローチする手術であれば経結膜脱脂法のように脂肪を切除する方法であってもあるいは経結膜的眼窩脂肪組み換え術のように眼窩脂肪を切除ではなく移動させる方法であっても基本的には眼窩内の組織の容量は減る方向にいくので理論上は上まぶたがくぼむ可能性はゼロではないと思います。

その中で最も回避しやすいのは経結膜的眼窩脂肪組み換え術ではないかと思います。経結膜的眼窩脂肪組み換え術は目の下の膨らみ部分の眼窩脂肪の圧力を保ちやすい手術になります。

では経結膜脱脂法+脂肪注入ではどうかといいますとそこまでの予防効果は期待できないと思います。脂肪注入は主に形を作るための注入であって圧力を保つほどに入れることはないからです。

その他の治療方法となると眼窩脂肪の手術ではなく、他部位から採取した脂肪注入のみやヒアルロン酸の注入をするということになるのかもしれません。

対処方法

それではもし上まぶたが窪んだ場合には対処方法はあるのでしょうか。

おそらく、くぼみに対してはヒアルロン酸や脂肪注入によって改善はすると思います。

しかしながら眼球が窪んだという現象(実際にあるかないかはわかりませんが)に対しては対応は難しいと思います。

結論

目の下のくまやたるみで悩んでいる場合に、経結膜脱脂法を受けると上まぶたが窪む可能性があるから心配で治療を受けれないと思われたときにはなかなか決断が難しいと思います。

ほとんどないと思いますがごくごくまれにあり得ることと心得て治療を検討されるしかないと思います。

それよりもやはりクマを解決した方がよいと思えたら幸せだと思います。

また何よりも個人個人の目の下のくまやたるみの症状に対して治療方法を選ぶことが大切であり、ごくごくまれにあり得ることにのみ注目して経結膜的眼窩脂肪組み換え術を選ぶというのはあまりお勧めできません。

上まぶたのくぼみの程度というものも気になることだと思われますのでさまざまな症例写真を参考にされるとよいと思います。

筆者紹介

著者
石川勝也
役職
プラストクリニック院長
資格
日本形成外科学会認定専門医
日本美容外科学会認定専門医(JSAS)
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