目元治療の世界を知る

ここでは目元の治療にはどのようなものがあるのかをざっと知り、それらの治療を提供する医療機関の現状および費用の相場についてお伝えします。
かたよった口コミや評判に惑わされることなく広く知った上でご検討することができれば多くの選択肢を持てるためよりご自身の理想にあったものを見つけやすくなると思います。

≪このページの目次≫

  • 目の下のクマ・たるみをとる方法 -ざっくり見渡す- 
  • 美容外科クリニックの全体を眺める -目の下治療の現状を知る- 
  • 目元治療の情報のとらえ方 -偏った情報について- 
  • 一般的な目元のくま・たるみ治療の費用の相場 

目の下のクマ・目の下のたるみをとる方法(ざっくり見渡す)

目の下のクマやたるみをとる方法について見渡すと大体以下のようになっていると思います。

照射:サーマクール、フラクショナルレーザー、YAGレーザーなど

注射:ヒアルロン酸、wPRP、成長因子(グロースファクター)、ボトックス、その他(長持ち物質など)

皮膚を切開する手術

  • 皮膚切除
  • 眼輪筋吊り上げ+皮膚切除
  • 眼輪筋吊り上げ+皮膚切除+脱脂
  • ハムラ法(眼窩脂肪移動術)
  • ハムラ法(眼窩脂肪移動術)+頬前面引き上げ など

皮膚を切開しない手術

  • 脱脂
  • 脱脂+脱脂した脂肪を注入
  • 経結膜的眼窩脂肪組み換え術(≒経結膜的眼窩脂肪移動術)(≒裏ハムラ法)
  • 経結膜的眼窩脂肪組み換え術(≒経結膜的ハムラ法)(≒裏ハムラ法)+頬前面引き上げ
  • 脱脂+脂肪注入
  • 脂肪注入               など

その他の治療(金の糸など)

こんなにざっくり言われても症状に対する治療方法の位置づけが見えてこないと思います。

大体の先生が思っているであろうことを私の考えを踏まえてお伝えしますと、

  • 手術とそれ以外では手術の方が基本的に効果が高い。
  • 照射系はお顔のメンテナンスが好きな方に向いています。劇的な変化はありません。
  • 各施術方法には必ずその特徴があるためどれでも一緒ではない。

海外の目の下のクマ・たるみ治療は

海外の目の下のくまやたるみ治療に関して知ることも大変参考になります。

詳細は「目の下のくま・たるみ治療の選択【海外の論文より紹介】」を参考にされてください。

海外では

  • ヒアルロン酸注入
  • 脂肪注入
  • 皮膚切開法(ハムラ法など)
  • 経結膜的眼窩脂肪移動術(裏ハムラ法)をそれぞれ工夫した方法

などの治療方法に対する報告が多いようです。

代表的な施術方法例の紹介

様々な治療方法が『あなたの症状に対して』なぜその治療方法なのかを確認しましょう。
それが最も大切なことです。

例えば、

  • なぜ目の下の膨らみを取り除くのではなく、移動させるのか
  • なぜ脂肪注入ではなく、脂肪を取り除くのか

・・・など

歴史的に見ても目の下の膨らみの脂肪を移動させる裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)に準じた手術は目元治療の選択肢からはずせません。

将来のことを考えると経結膜的眼窩脂肪組み換え術が最もよい適応の方が必ずいます。

それがどのような症状なのかを症例写真を見せてもらうことをお勧めします。

≪治療全般に言えること≫

目の下のしわ(線)とたるみ(大きな影)は別:治療の考え方も別

注射はしわに対するものと影に対するものがある

目元の立体感はボリュームを作る注射または形を整える手術でないと変えることはできない

美容外科クリニックの全体を眺める 目元治療の現状を知る

多くのクリニックで目元の治療をされていますが現実的には多くの施術方法のうちいくつか絞って行っているのが現状です。そしてよくある議論はどの治療方法が優れているかということです。

すばらしい治療方法を行えることは医師として大切なことですが、各施術方法には単純に一長一短ありますので一概にどれが最も優れているとは言えません。

例えば、目の下のふくらみを取り除いたときと目の下のふくらみをその下の影の部分に移動させたときでは目元への光の当たり方が違います。色味の変化も違います。術後の経過も違います。これはまた別の治療方法をとったときにも言えることです。

同じ「切らない目元のくま・たるみ治療」と言ってもそれぞれの症状に対して行う治療方法で出てくる結果が違うということを知っておかれることが大切です。そして症状をみてもらいいくつかの治療方法でどのような結果が得られるのかを聞かれることをお勧めいたします

≪Point≫

相談する前から自分の思い込みで治療方法を決めない。

広く深く見渡した中から施術方法を提案してくれるクリニックで相談する。

(偏った施術方法しかしていないクリニックでは本当にご自身がそれでよいか確認する。)

目元治療の情報のとらえ方 -偏った情報について-

治療全体を見渡した上で改めて確認しておくべきことは、ご自身が拾った情報が本当に個々の方の症状にあわせた情報であるかということです。またその情報の発信者は幅広い治療法の経験に基づいて情報を出しているかということです。狭い情報のみをかいつまんで鵜呑みにしないことが大切です。

 

狭い情報とは、例えば脱脂をするとシワが増えるので50歳以上の方には脱脂はしてはいけないなどということです。

ここで一つのケースをご紹介させていただきます。

70代の女性です。脱脂+脱脂分注入をしております。たしかにシワは増えており、細かく見ますと決して結果はベストではありませんが、ご年齢を考慮すると負担の少ない妥当な術式ではないかと思います。術前にこの負担の少ない治療方法でも、そこそこ良い結果がでると判断したために治療方法の選択肢の一つとしてあります。(ここでの「+脱脂分注入」はクマの内側の「ハの字」の影を軽減する目的で行っております。)

施術名:経結膜脱脂法+脱脂分注入
リスク:腫れ、内出血、痛み、しこりの形成、左右差など
費用:33万円(税込み)

狭い情報による評価の場合

  • ご年齢を考慮すると脱脂をおこなうとシワが増えるのでやめたほうがよい
  • たるみが強いので切開をしないとシワやタルミはよくならない

となると思います。

我々の評価による治療方針の場合

  • シワは多少増えるかも知れませんが、脱脂に少し工夫を加えるだけで最も困っているたるみはずいぶん解決できそう
  • そうであればご年齢を考慮すると極力負担の少ない方がよいのではないか
  • 皮膚を切開するたるみ取りの形が必ずしも美しいとは限らない(これはこまかな手技にもよります)
  • 伺ったお考えからは切開の必要性を感じない

となりました。

もし経結膜脱脂術ではよい結果が得られないと考えたならば、それはひとえに(偏った考えからくる?)狭い情報ということになります。そして今回の手術方法の選択肢をはずされて、負担の多い治療法しか選択できなかったとするととても不幸だと思います。

どうして狭い情報が存在するのでしょうか

人は自分の得意なことを良い物として伝える傾向があります。
自信があるからです。
ところが追求してこなかった手術方法については、追及する以前に欠点を前面に、はなから否定してしまうことがあります。
技量的に自分ができない治療方法は提案できないので、できる治療方法のみをお勧めするということもあり得ます。
また、必ずしも手の込んだ治療方法がいつも個人の満足を満たすようないい結果を生み出すとも限りません。

≪Point≫

発信されている情報がどういう情報なのかを客観的に評価する目が大切です。

その他の狭い情報

  • 目の下のふくらみがある場合は膨らみを取れば(脱脂をすれば)クマやたるみはなくなる。
    ←症状によります。
  • 基本的に脱脂をすると窪んだりシワが増えるので脱脂をする手術はよくない。
    ←ハムラ法至上主義の考え方の場合に多いと思います。
     また脱脂をした時の形に対する経験の少なさからきている可能性もあります。
  • 目元に脂肪を注入すると凸凹になるから入れてはいけない。
    ←技術的な側面が大きいと思います。
  • 経結膜的眼窩脂肪移動術(経結膜ハムラ法)は難しいので結果がよくない。
    ←技術的な問題と、適応の見極めが大切だと思います。

などあります。

一般的な目元のくま・たるみ治療の費用の相場

≪注射≫    
ボトックス
(目尻、目の下の内側のシワ)
1万~4万円程度  
ヒアルロン酸 3万~15万円程度 頬を持ち上げる場合は別途かかることが多いです。
PRP(wPRP) 5万~20万円程度  
成長因子(グロースファクター) 5万~20万円程度  
≪皮膚を切開する手術≫    
ハムラ法(たるみ取り+眼窩脂肪移動術)などタルミ取り手術 30万~50万円程度  
≪皮膚を切開しない手術≫    
経結膜脱脂法(脱脂) 20万~40万円程度 「切らない目の下のくま・たるみ治療」と言われます。

経結膜的眼窩脂肪組み換え術

(≒経結膜的ハムラ法≒裏ハムラ法)

35万~50万円程度 「切らない目の下のくま・たるみ治療」と言われます。
脂肪注入 20万~40万円程度 注入範囲や脂肪の加工の仕方や量によることがあります。
だいたいの相場を書いてみました。

筆者紹介

著者
石川勝也
役職
プラストクリニック院長
資格
日本形成外科学会認定専門医
日本美容外科学会認定専門医(JSAS)
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